まだまだ暑いですが、9月以降徐々に気温が低下していきます。
朝晩の気温差があるとかぜやアレルギー性鼻炎症状が出やすくありますが、秋の花粉症の可能性もあります。
秋の花粉症は8月から10月に症状が出ることが多く、原因植物としてブタクサ、ヨモギ、カナムグラが挙げられます。
これらはいわゆる雑草ですので、春のスギ花粉とは異なり、比較的近い範囲にしか花粉は飛散しません。
この時期になると鼻炎症状の出る方で、近所にこれらの雑草がある場合、近寄らない、可能であれば除草するとよいかもしれません。
※ 除草する場合はマスクやメガネを装着して、花粉を浴びないようにお気をつけください。
<ブタクサ>
<ヨモギ>
<カナムグラ>
胃食道逆流症(逆流性食道炎)は長引く咳の主な原因のひとつです。
胃食道逆流症は胃酸が食道に逆流することによって生じる症状のことで、典型的には胸やけや呑酸(酸っぱいものの逆流)のような食道症状を伴いますが、食道症状を伴わない例も多くあります。
なぜ胃酸の逆流が咳を起こすのかといいますと、逆流した胃酸により食道下部に存在する迷走神経が刺激されたり、咽喉頭まで逆流した胃酸の直接的な刺激により咳が生じます。
食道裂孔ヘルニアのような逆流しやすい状態の方は、就寝時に横になった状態で逆流しやすいのですが、そうでない場合は胸やけなどの症状がほとんどなく、主に日中に会話や食後しばらくしてからなどの場面に咳が出やすくなります。
また、食道症状を伴わない場合、咳払い、声がれ、咽喉頭の違和感のような症状を伴う咳があれば、胃食道逆流症の存在を疑います。
長引く咳の原因として胃食道逆流症を疑った場合、検査で確認することは一般的ではなく、まずは治療薬に対する反応を確認します。
治療としては胃酸分泌を抑える薬を内服します。
胸やけなどの症状は比較的速やかに改善するのですが、咳や声がれのような症状の改善には数ヶ月を要することがあります。
したがって、長引く咳の原因として胃食道逆流症の関与を疑う場合は、根気強く内服治療を行う必要があります。
薬以外の治療として、胃食道逆流を起こしやすくする原因を除くことも有用です。
肥満、飲酒、カフェイン、チョコレート、炭酸飲料などは胃食道逆流を起こしやすいことが知られており、該当する場合、減量や飲食習慣の改善を行うことが望ましいです。
また、就寝前の飲食を控えることや腹部を締め付けるような衣服を避けることも必要です。
咳喘息や感染後咳嗽などが咳の原因である場合でも、咳き込むことで腹圧が上昇し、胃酸の逆流を引き起こし、さらに咳を引き起こすような悪循環を招くことがありますので、吸入治療に加えて胃酸分泌抑制薬を併せて使用することもあります。
長引く咳の原因として、胃食道逆流症は比較的頻度の高い原因と考えられますので、咳が長引いてお困りの方場合、一度は治療を試してみる必要があると考えられます。
※ この記事は「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」を参考に記載しました。
長引く咳の原因の一つとして肺がんがあります。咳の原因としての頻度は非常に少ないのですが、生命に関わる重要な病気です。
一般的に肺がんは無症状のまま徐々に進行しますので、健診などで偶然発見されることが多い病気です。発見する機会のないまま進行が続くと、ようやく症状が出てきます。
肺がんが進行し、気管や比較的太い気管支の表面にまで浸潤した場合に、咳として表に症状が現れます。
肺がんは早期発見し、手術(もしくは放射線治療)を行うことができれば治癒が期待できる病気です。ただし、咳として症状が出てきた場合には、比較的進行していることが多いため、喫煙者など肺がん発症のリスクが高い方は定期的に胸部X線写真の撮影を受けるのが望ましいと考えます。
頻度は少ないものの、長引く咳の原因のひとつとして副鼻腔気管支症候群という病気があります。
慢性副鼻腔炎と気管支炎・細気管支炎・気管支拡張などが同時に存在する状態で、好中球という白血球が副鼻腔や気管支で過剰に炎症を引き起こした状態です。
症状としては咳に加えて、膿性の鼻汁、痰、後鼻漏などがあります。
治療としては炎症を抑える効果のあるマクロライド系抗菌薬の少量長期内服を行います。1-2ヶ月ほど内服を継続することで、鼻汁、痰などの気道分泌が減少し、その結果咳も減ってきます。
マクロライド系抗菌薬にはいくつか種類がありますが、まずはエリスロマイシンを開始することが多いです。治療効果不十分の場合は、クラリスロマイシンへ変更します。
ただし、クラリスロマイシンは肺非結核性抗酸菌症に対する重要な治療薬ですので、事前に痰の検査を行って非結核性抗酸菌の感染の有無を確認しておくのが望ましいです。
マクロライド系抗菌薬の副作用としては下痢、味覚異常などがあります。また、他の薬との飲み合わせが悪い場合があります。
治療経過次第ですが、症状が安定していれば、2年を目処にマクロライド系抗菌薬の内服を終了しますが、症状が再燃した場合は内服を再開し、さらに長期間の内服を行わざるをえないこともあります。
副鼻腔気管支症候群を発症される方は決して多くはありませんが、時々いらっしゃいますので、慢性咳嗽、膿性鼻汁・痰、後鼻漏などの症状が持続する方は、一度は胸部X線写真を撮影し、異常のないことを確認しておくことをお勧めいたします。
※ この記事は「咳嗽・喀痰のガイドライン2019」を参考に記載しました。
高血圧を治療中の方で、なかなか血圧が下がりきらない場合があります。
特に起床時の血圧が高いような場合には、睡眠時無呼吸症候群が潜んでいる可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群とは文字通り、睡眠中無意識に無呼吸、低呼吸(通常より小さな呼吸、もしくは酸素飽和度の低下)を反復的に繰り返す疾患です。
典型的な症状としては、日中の眠気や疲労感がありますが、その他に睡眠中の呼吸困難(窒息感)、朝の頭痛、不眠を自覚することもあります。
その一方で自覚症状のない、あるいは気づいていない方も相当数存在すると考えられます。
高血圧の方の実に30%に睡眠時無呼吸症候群が合併していると報告されています。
睡眠時無呼吸症候群に対するCPAP治療を受けることで、収縮期血圧 2.6 mmHg、拡張期血圧 2 mmHg とわずかですが血圧が低下します。
特にコントロール不良な高血圧の方の場合は、収縮期血圧 6.7 mmHg、拡張期血圧 5.9 mmHg の降圧効果があるとされます。
血圧のコントロールが不十分な方は、自覚症状がなくても、一度は睡眠時無呼吸症候群が存在する可能性を疑う必要があると考えます。
※ この記事は「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」を参考に、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を念頭に記載しています。
新型コロナウイルス感染症の後遺症として咳が続くことがよくあります。咳が続く期間は数週間から数ヶ月にまで及びます。
咳が続く原因として以下のような理由が考えられます。
① 新型コロナウイルス感染に伴い生じた肺炎像が残存しているため
② 気道に感染した新型コロナウイルスが炎症を生じさせるため
③ 新型コロナウイルスが咳を引き起こす神経に感染するため
残念ながら、新型コロナウイルス感染後の咳に対する治療法として、確立したものはありません。
咳に対する一般的な治療薬が主体となりますが、以前からかぜをひいた後に咳が残りやすい方であれば、咳喘息の可能性を考慮して吸入ステロイド薬を使用する意義はあると考えられます。
また、吸入抗コリン薬はウイルス感染による咳感受性(咳の出やすい状態)を和らげることが知られており、新型コロナウイルス感染後の咳にも効果がある可能性があります。
咳を引き起こす神経への影響を抑えられると咳を減らせる可能性が高く、近日難治性の咳に対して発売される予定の薬が効果があるかもしれません(新型コロナウイルス感染後の咳に対して処方できるとは限らないのですが)。
長引く咳は体力を消耗させ、気も滅入らせてしまいます。コロナ禍にあっては周囲の視線も気になるものです。しかし、新型コロナウイルス感染後の咳には必ず終わりが来ますので、症状の強い間は薬を使用して凌げるようにサポートさせていただきます。
新型コロナウイルス感染症が猛烈に流行しています。
現在流行しているオミクロン株は、比較的軽症で済み、重症化する可能性も低いと考えられていますが、それでも持病をお持ちの方にとっては、心配が非常に大きい状況ではないかと推察します。
気管支喘息の方にとっての新型コロナウイルス感染症に関して、現在以下のようなことがわかっています。
① 気管支喘息の方がそうでない方に比べて、新型コロナウイルス感染症に感染しやすいということはなく、むしろ、気管支喘息の方では、新型コロナウイルスが体内に侵入する際の入り口となるACE2というもの発現量が少ないため、新型コロナウイルス感染症にかかりにくいという報告があります。
② 気管支喘息の方が新型コロナウイルス感染症に罹患してしまった場合、重症化しやすいということはありません。
③ 気管支喘息の方が新型コロナウイルス感染症に罹患してしまった場合も、吸入ステロイド治療の使用により重症化することはなく、安全に使用できます。
④ 現在の気管支喘息のコントロール状況が悪い人ほど、入院するリスクが高くなります。
以上のことから言えることは、気管支喘息の方が新型コロナウイルス感染症に罹患しても、重症化しやすいということはありませんが、日常の吸入治療を怠り、喘息のコントロールが悪い状態にあると入院のリスクが高まり、また、新型コロナウイルス感染症に対する吸入ステロイド薬の悪影響も乏しいため、基本的な感染対策(3密の回避、マスク、手指消毒)を行いながら、毎日の吸入治療を継続していくことが最も重要である、ということではないでしょうか。
咳が長引くと身体的に消耗するだけではなく、コロナ禍においては周囲の人の視線も気になるものです。当ホームページ内の診療案内(https://yok-cli.com/examination/examination02/)では長引く咳の原因として、以下の代表的な3つの病態をご紹介しています。
これらは咳を引き起こす原因となる部位によって分けたものです。それでは咳の出やすい時間帯によって、長引く咳の原因が分けられるのか考えてみます。
・日中の咳
いずれの原因の咳であっても日中に咳が出ることがほとんどです。ただし、日中にひどく咳き込むけど、夜間は咳で目が覚めることはほとんどないような場合、感染後咳嗽(風邪をひいた後に長引く咳嗽)が多い印象があります。
・夜間の咳
夜間ベッドに横になってから咳き込む場合は、胃食道逆流症による咳の可能性があります。横になった状態では、起きている時よりも胃酸が逆流しやすくなるため、咳を引き起こします。
また、心臓の機能が低下した心不全も、横になると心臓へ帰ってくる血液量が増え、心臓への負担が増すため、咳や息苦しさを引き起こします。
・深夜・早朝の咳
深夜、早朝の咳は気管支喘息に特徴的な症状です。夜間は交感神経のバランスの変化や気温の低下から気管支が収縮しやすく、喘息の症状が出やすくなります。
・起床後の咳
朝目が覚めてからの咳は、特に鼻水を伴うような場合、上気道(鼻炎)を原因とすることが多いです。特に寒い季節に昼夜の気温差が大きいと、鼻水が出て、それが喉を刺激して咳を引き起こします。
上記は代表的なものを挙げており、必ずしもこれに当てはまるとは限りませんが、長引く咳でお悩みの方が来院された時に、咳が出やすい時間帯をお伺いしているのは、原因を見つける参考となることがあるからです。
気管支喘息の治療において最も重要な薬が吸入薬です。
吸入ステロイドという薬を直接気管支内へ吸い込むことで、喘息症状を引き起こしている気管支の炎症を鎮める効果があります。
ただし、吸入薬はきちんと吸い込めていないと、必要なところまで薬が到達できず、十分な効果が発揮できません。
多くの吸入薬があり、それぞれ使用方法が異なりますので、その薬剤の使用方法を習得して頂く必要があります。
取り扱いの難しい吸入薬はありませんので、何度か使用すればすぐに習得できるはずです。
喘息学会のホームページ(https://jasweb.or.jp/movie.html)に、各薬剤の使用方法を説明した動画が掲載されていますのでぜひご参照ください。
インフルエンザワクチン接種が始まっていますが、今年は流行するのかどうかということが皆様の気になられているのではないでしょうか。ただし、その答えとしては、誰にもわからないというのが正直なところです。
去年のようにコロナ対策として多くの方がマスクや手指消毒などを心掛けた状態では、インフルエンザは流行しにくくなるのは間違いないと思います。今年7-9月、南半球のオーストラリアは冬ですが、インフルエンザは流行しなかったようです。一方でインドやバングラデシュでは夏にインフルエンザが流行しています(日本感染症学会HPを参照)。
この冬に日本でインフルエンザが流行するかどうかはやはりわかりません。ですので、特にインフルエンザによって重症化するリスクの高い方(65歳以上の方、5歳未満のお子様、肺気腫・COPD、間質性肺炎のような呼吸器の病気をお持ちの方、心臓・腎臓等の内科の病気をお持ちの方、免疫の低下するような病気をお持ちの方、妊娠中の方など)、そのような方とお住まいの方は積極的にインフルエンザワクチンを接種し、インフルエンザに感染した場合の重症化リスクをできるだけ低くするように備えて頂くのが望ましいのではないかと思います。