呼吸器内科
気になる症状がある時はお早めにご相談ください
せき・たんをはじめ、いびきや日中の眠気など多種多様な呼吸器疾患に幅広く対応しております。

呼吸器内科について

当クリニックでは肺や気管支といった呼吸器領域の病気に対する診療を丁寧、かつ適切に行いたいと考えています。肺は口から気管支までつながる気道を通して、外の環境と直接交通のある臓器ですので、肺炎や肺結核のような感染症の場となりやすくあります。また、気管支喘息のようなアレルギーの病気、肺がんをはじめとする腫瘍、間質性肺炎のような自己免疫の異常に関わる病気(自分の免疫機構の異常によってもたらされる病気)、肥満が原因となりうる睡眠時無呼吸症候群など、肺や気管支という部位だけでも多彩な病気が起こります。これらの病気が見つかるきっかけとなるのは、咳や息切れなどの自覚症状、健康診断でレントゲン異常を指摘されることがほとんどです。そのようなひとつのきっかけから受診していただく皆さまには、いかに症状を改善していくか、何か重大な病気が隠れていないか、慢性的な病気であれば上手に付き合っていけるように、ということを常に念頭に置いて診療に努めてまいります。また、当クリニックは呼吸器領域の病気による身体障害や特定疾患(指定難病)認定にも対応いたします。
喘息

診療する主な疾患

せき、たん、息切れ、くしゃみ・鼻水、胸痛、動悸、頭痛、いびき、不眠、手足のむくみ、吐き気、胸焼け、便秘・下痢、かぜ、気管支喘息、肺気腫・COPD、慢性気管支炎、気管支拡張症、鼻炎・花粉症、睡眠時無呼吸症候群、肺炎、間質性肺炎、慢性呼吸器感染症(肺非結核性抗酸菌症など)、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症、不整脈、慢性心不全、慢性腎臓病、胃炎、逆流性食道炎、脂肪肝、慢性肝炎、甲状腺機能低下症

せき

多くの方がせきを経験されたことがあると思いますが、そのほとんどは風邪をひいたときに鼻水や痰の排出を促すために、体が生理的に反応して起こる現象で、通常は1〜2週間程度で自然に改善します。しかし、ときに2週間を超えて咳が長引くことがあり、特に2ヶ月を超えて続くようなせきを慢性咳嗽(がいそう)と呼んでいます。長引くせきは体にとって負担となるばかりか、特にコロナ禍を経験した今、せきをしていることへの周囲からの視線がとても気になるものです。せきの原因は多くありますが、原因をうまく特定できれば、適切な治療を行うことでせきを抑えることができます。
慢性的なせきの主な原因として、以下のような3つの状態が挙げられます。

鼻からの刺激によるせき

鼻炎や副鼻腔炎(蓄膿)のような病気では、鼻から分泌された液体(鼻水や膿)がのどを伝って流れ落ち、その刺激によりせきを引き起こします。鼻水を伴うせきやのどの奥でなにかが流れ込んでいるような感覚をお持ちの方は、これが原因かもしれません。鼻炎であればアレルギー薬や点鼻薬、副鼻腔炎であれば膿の排出を促すことでせきの改善が期待できます。

気管支からの刺激によるせき

毎年ある時期になるとせきが出て続く、かぜをひいた後にせきだけがしばらく続いてしまうような経験のある方は咳喘息(せきぜんそく)という病気かもしれません。咳喘息では気管支が刺激に対して過敏に反応しやすい状態にあります。過敏になった気管支では炎症というものが起こっており、これを鎮めるために吸入ステロイドという薬を使用することでせきの改善が期待できます。

胃酸の刺激によるせき

胃から分泌された胃酸が食道に逆流することが刺激となりせきを引き起こすことがあります。胸やけや口まで苦味や酸味を感じる胃酸が上がってくるような症状のある方、横になるとせきが出やすいような方は胃酸逆流によるせきの可能性があります。この場合、胃酸の分泌を抑える薬を内服することでせきの改善が期待できます。
長引くせきの原因として主なものを3つ挙げましたが、これ以外にも結核や百日咳などの感染症、気管支拡張症や間質性肺炎などの慢性的な肺の病気、血圧を下げる薬の副作用、心理的なストレスなどがせきの原因となる場合もあります。原因がわからないこともありますが、当クリニックではせきを和らげるためにできる限りの対応をしてまいります。

たん

気管支や肺への細菌やウイルスの感染、タバコによる慢性的な刺激などに反応してたんが分泌されます。黄色や緑色のように色着いたたんは主に細菌やウイルスによる感染の場合に見られます。時に血の混じったたん(血痰)が出ることがあり、この場合、気管支拡張症、結核や非結核性抗酸菌の感染、肺がんなどが原因のことがあります。細菌の感染による痰であれば、抗菌薬を内服することで改善が期待できます。血痰の場合も止血薬の使用や安静にすることで多くの場合止血します。

息切れ・呼吸困難

坂道や階段を登るなど体に負担のかかる場面での息切れは多くの方が経験なさることと思います。その多くは運動不足が原因かもしれません。しかし、今までは普通にできていたことで息が切れるようになったり、平らな場所を歩いていても息が切れて立ち止まることがあるような場合は、何らかの病気が原因となっている可能性があります。
息切れの程度を表す指標として mMRCスケールというものがあります。
息切れ・呼吸困難
1: 激しい運動をしたときにだけ息切れがする
2: 早足で歩いたり、緩やかな上り坂を歩く時に息切れがする
3: 息切れのせいで同年代の人より歩くのが遅い、あるいは平らな道を自分のペースで歩いていても、息切れのせいで立ち止まることがある
4: 平らな道を100m、あるいは数分歩くと息が切れて立ち止まる
5: 息切れが酷くて家から出られない、あるいは服を着替えるだけでも息が切れる
このレベルが2を越えるような息切れのある方は何らかの病気が潜んでいる可能性がありますので、ぜひご相談ください。以下のような息切れの原因となる病気がないかを調べていきます。
気管支喘息   
肺気腫(COPD・タバコ肺)  
間質性肺炎   
心不全   など

いびき・日中の眠気

いびき、夜中に何度も目が覚める、十分な睡眠をとっているのに寝た気がしない、朝早く起きられない、昼間に眠気が強いなどの症状がある方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性を疑う必要があります。

気管支喘息

何らかの刺激に反応して、発作性に気管支が収縮し、呼吸をするたびにぜーぜー、ひゅーひゅーと音がなり、つらい息苦しさを感じる病気です。かぜをひいたり、ほこり、ダニ、ハウスダスト、ペットの毛や黄砂など非常に細かい物質を吸い込んでしまうことによって喘息の症状が引き起こされます。子供の頃に発症した喘息が成人後も引き続く場合や、成人後、高齢になってからでも発症することがあります。また、上述のような発作性の症状の自覚がなくても、歩行など体を動かした際に慢性的な息切れ症状を引き起こす場合があります。
気管支喘息
現在、喘息の治療は確立しており、気管支への刺激となる物質を吸い込むのを避けることはもちろんですが、気管支で慢性的に発生している炎症(刺激に対して白血球が気管支に集まった状態のことで、気管支を収縮させるような物質を放出します)を鎮めるためにステロイド薬の吸入を行います。症状の程度によって、気管支拡張薬の吸入を併用したり、最近では生物学的製剤と呼ばれる抗体薬を用いて、喘息の悪化に関わる好酸球という白血球やIgEという物質の働きを直接抑えるような治療法もでき、良好な成績を収めています。これらの治療法を行って喘息症状が十分にコントロールされた状態であっても、自己判断で治療を中断すると、やがて症状が再燃することがほとんどです。また、喘息発作を繰り返すたびに気管支の壁が厚くなるなどした結果、肺の機能が低下し、治療をしても正常の状態にまで回復しなくなることが知られていますので、良好なコントロール状態を維持するためには、常日頃から治療を継続する必要があります。
現在多くの吸入治療薬が登場していますが、吸入薬は薬剤の形状から2種類に分けられます。
剤形 メリット デメリット
エアゾール(ミスト)製剤 一般的にドライパウダー製剤より粒子が細かいため、より奥の気管支まで到達する。 本体を押し込むと薬が噴霧されるため、息を吸い込むのと本体を押し込むタイミングを合わせる必要があり、慣れるまで少し時間を要する(ただし、スペーサーを用いることこのデメリットは解決可能)。
ドライパウダー製剤 自分のタイミングで薬を吸入できる。 一般的にエアゾール製剤より粒子が大きいため、より奥の気管支まで到達しにくい。粉末がのどを刺激することがある。
それぞれメリット、デメリットがありますので、一人ひとりの方に応じてより適切な吸入薬を選択する必要があります。また、治療を開始したあとも常に、うまく吸入できているか、症状を抑えるために吸入薬の量・回数は十分か、などを評価することが大切になります。
喘息にはアレルギーが関わっていますので、完全に治ることは少ないのですが、症状をコントロールして、上手に付き合っていくことができる病気ですので、ぜひご相談ください。

肺気腫(COPD・タバコ肺)

喫煙によって肺の構造が壊れ、肺が膨らみ、気管支が狭くなった結果、歩行や運動の際に息苦しさを自覚する病気です。喫煙を続けている限りは肺が壊れ続けるので、禁煙して病気の進むスピードを遅らせることがとても重要です。
喫煙によって壊れた肺は残念ながら元の状態に戻ることはありませんが、気管支が狭くなって、息を吐き出しにくくなることが息苦しさの原因となりますので、気管支拡張薬の吸入を行うことで症状を和らげることができます。肺気腫が極度に進行してしまった場合は、血液に取り込まれる酸素の量が不足し、酸素吸入が必要になる場合があります。また、肺がんを合併することも多くあります。喫煙されている方やすでに禁煙された方でも、息苦しさを感じる場合は肺気腫の可能性がありますので、ぜひご相談ください。

気管支拡張症

気管支が通常より広がってしまった状態のことを気管支拡張症と呼びます。その原因として、幼少期の肺炎の既往、免疫不全(感染症に対する抵抗力の低下した状態)により肺炎を繰り返すこと、肺非結核性抗酸菌症のような慢性的な感染症の存在、時にびまん性汎細気管支炎と呼ばれる特殊な病気などが挙げられます。
気管支拡張症では、気管支からの分泌物が多いため、たんが多くなります。また、気管支粘膜から出血して血たん、時に喀血(気道からの出血)することがあり、ひどいと息切れすることもあります。拡張した気管支では病原体に対する防御機構の働きが低下し、肺炎を起こしやすくなります。
残念ながら拡張した気管支を正常に戻す治療法はないのですが、たんはマクロライドという抗菌薬を少量内服することで減らすことができます。肺炎を起こしやすいため、インフルエンザや肺炎球菌に対するワクチン接種をおすすめします。

間質性肺炎

間質性肺炎とは、肺を構成する肺胞という小さな袋状の構造の周囲に存在する、間質と呼ばれる部位が主に傷害を受ける肺炎の総称です。間質性肺炎と一言で言っても多種多様な原因、パターンがあるのですが、ここでは慢性経過の間質性肺炎(肺線維症)について記します。
主な症状は咳と息切れです。原因はわからないことが多いのですが、関節リウマチなどの膠原病の存在、粉じん吸入による慢性的な刺激、羽毛などに対するアレルギー反応、ある種の薬の副作用などを原因として発症することがあります。原因不明の間質性肺炎(特発性間質性肺炎や特発性肺線維症と呼ぶ)の場合、年単位で徐々に肺炎が進行し、肺活量の低下、酸素飽和度の低下により息切れが強くなり、場合によっては酸素吸入が必要になることがあります。
残念ながら現在までに、肺移植を除いて、根本的な治療法は開発されていないのですが、抗線維化薬と呼ばれる薬剤を内服することで、間質性肺炎の進行を遅らせることが期待できます。また、急性増悪と呼ばれる、短期間での急激な間質性肺炎の悪化を、抗線維化薬が抑える可能性も示唆されています。
根本的な治療法がないため多くの方が不安をお感じになられますが、間質性肺炎(肺線維症)の経過には個人差がありますので、定期的に医療機関を受診し、主治医と相談しながら、その方に合った治療方針を定めて、不安を和らげながら上手に付き合って行くことが大切です。

肺非結核性抗酸菌症

非結核性抗酸菌という結核菌と同種の菌による慢性的な肺の感染症のことを肺非結核性抗酸菌症と呼びます。無症状の方も多くいますが、咳やたん、時に血たん、進行すると息切れなどを自覚することがあります。たんが出る方はたんの細菌検査を行って、非結核性抗酸菌の有無を確認します。どうしてもたんが出ない場合には、気管支鏡検査(肺の内視鏡検査)を行うことがあります。
非結核性抗酸菌は土や水、動物の体内などに存在しており、何かの拍子に菌を吸い込むことで肺に感染すると考えられています。この感染症の特徴は、人から人へは感染しない、非常に進行が遅い、進行せずに自然と落ち着くこともある、ただし、治療をしてもしつこく菌が残り続けることがある、というものです。理由はわかっていないのですが、この感染症は40歳代から60歳代ぐらいの女性の方に多く見られます。
自然と落ちつくことがあるため、当初は様子を見るだけにとどめ、症状が悪化したり、レントゲンやCTで抗酸菌症による病変が広がった場合に治療の導入を検討します。治療としては複数の抗菌薬による内服治療が一般的です。非結核性抗酸菌には多くの種類があるのですが、その中でも最も多い MAC と呼ばれる抗酸菌に対しては、クラリスロマイシン、エサンブトール、リファンピシンという3種類の抗菌薬を、最低でも1年間内服することが標準的な治療法です。長期間の治療になりますので、抗菌薬の副作用の出現に注意しながら、治療を継続することになります。特にエサンブトールという薬は長期間の内服で、視神経に障害が発生し、視力低下、視野狭窄、色覚異常といった症状が生じることがありますので、眼科と連携しながら治療を継続する必要があります。
何だか難しい病気のようにお感じになるかもしれませんが、多くの場合慌てる必要はなく、うまく付き合うことのできる病気ですので、ぜひご相談ください。