新型コロナウイルスの流行によって、ワクチンの重要性が改めて認識されています。世界には数多くの感染症が存在しますが、それらの中でワクチンが開発されている感染症はごく一部にとどまります。感染症の中には感染後早期に症状を引き起こすもの、体内に長年潜んでようやく発病に至るもの、発がんに関連するものなどがあり、どのケースにおいても、後遺症が残ったり、最悪の場合生命に関わる場合もあります。現在認可されているワクチンを接種することで、これらの感染症の予防や重症化の抑制を期待できます。特に成人に接種できるワクチンは数えるほどしかなく、機会を逃さずに接種し、感染症やその後遺症を未然に防ぐことは大切な権利であると考えています。
また、ワクチンを接種する上で多くの方が不安に感じるのが副反応だと思いますが、認可を受けたワクチンは多くの試験を経て、安全性が確認されたものばかりで、そのいずれも副反応の可能性を上回る大きなメリットがあると考えられていますので、安心して接種していただきたいと考えています。
ワクチン接種をご希望の方は事前に電話連絡(
092-555-6677)をお願いいたします。下記に記載している定期接種(公費補助)対象者の料金は福岡市在住の方の料金です。下記以外のワクチンに関しても随時対応いたしますのでご連絡ください。
ワクチンの種類 |
費用 |
インフルエンザワクチン |
3,000円(税込)(65歳以上の方 1,500円) |
肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス) |
8,000円(税込)(定期接種対象者 4,200円) |
帯状疱疹ワクチン(シングリックス) |
1回 22,000円(税込) |
新型コロナウイルスワクチン
2021年9月現在、日本では3種類のワクチンが認可されています。ファイザー社とモデルナ社のワクチンが mRNA ワクチン、アストラゼネカ社がウイルスベクターワクチンです。どちらのワクチンも新型コロナウイルスの表面にあるスパイク蛋白と呼ばれる部分の mRNA(タンパク質を作る設計図)を接種することで、新型コロナウイルスに対する免疫を誘導するワクチンで、新型コロナウイルス(従来株)に対する 70-90% 以上の発症予防効果、それ以上の重症化抑制効果が確認されています。
副反応は発熱、倦怠感、接種部の腫れ・痛みなどで、特に若い方に多くみられますが、ほとんどの場合、数日のうちに改善します。既存のワクチンに比べると非常に効果が高いワクチンであり、このパンデミックを乗り越えるためには多くの方に受けていただきたいワクチンです。
インフルエンザワクチン
インフルエンザは変異しやすく、その年によって流行株が変化するため、毎年予測に基づきワクチンが製造されています。そのため毎年インフルエンザが流行し始める前の10-11月にワクチンを接種しています。ワクチンの発症予防効果は 40-50% 程度とされますが、それ以上の重症化予防効果が期待できます。
全国的に流行する感染症であり、ほとんどの方への接種がすすめられますが、特に推奨されるのは重症化リスクが高くなる、肺や心臓などに持病を抱えている方や65歳以上の方です。65歳以上の方は定期接種(公費による補助)の対象となっています。
肺炎球菌ワクチン
肺炎の原因となる細菌の中で最も多いのが肺炎球菌です。肺炎球菌は子どもの鼻や喉に定着している菌で、咳やくしゃみを介して周りの人に感染します。肺炎の他に、副鼻腔炎や中耳炎、重症感染症である髄膜炎や菌血症まで引き起こす病原性の高い病原菌です。
現在65歳以上の方に対して肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)の接種が定期接種(公費による補助あり)とされています(初回接種のみ、65歳・70歳・75歳等)。ニューモバックスの重症感染症に対する効果は約40%、肺炎に対する効果は約25%程度とされます。ニューモバックスの効果は経年的に弱まっていくことがわかっていますので、5年以上の間隔をあけて再接種することできます。副反応としては注射部位の痛みや腫れがほとんどで、多くの場合数日のうちに自然に回復します。
帯状疱疹ワクチン
子どもの頃に水痘(みずぼうそう)にかかった方では、水痘が治った後にも水痘・帯状疱疹ウイルスが体内の神経節というところに潜んでいます。このウイルスが長年潜んだ後に、ストレスや免疫機能低下を契機に再活性化し、帯状疱疹を発症することがあります。帯状疱疹は体の片側に痛みを伴う水疱として発症します。通常1−2週ほどで改善しますが、痛みが後遺症として残る場合があり、そうなると長年痛みに苦しむことになります。
帯状疱疹の発症を予防するワクチンがシングリックスです。50歳以上の方へ2ヶ月間隔で2度接種することで、未接種の方と比べて、帯状疱疹の発症が97%も少なくなる高い効果のあるワクチンです。副反応としては接種部位の疼痛が主なものです。残念ながら定期接種の対象にはなっていませんので、自費での接種となります。
子宮頸がん予防ワクチン(ヒトパピローマウイルスワクチン)
子宮頸がんのほとんどはヒトパピローマウイルスによる感染が原因と考えられています。ヒトパピローマウイルスは性行為を介して感染しますので、性行為を経験する前の女性にワクチンを接種することで、子宮頸がんの予防につながります。現在がんの発症を予防することのできる唯一のワクチンです。
小学6年生から中学3年生の女子を対象に定期接種(公費負担)となっていますが、接種後に体の痛みや手足が動かしにくいといった症状が出現する懸念があったため、現在積極的接種勧奨が止められています。しかし、ワクチン接種とこれらの症状との関係は証明されておらず、世界中で接種されているワクチンですので安全性には問題ないと考えられます。現在も子宮頸がんで年間約2800人の方が亡くなっていますので、ぜひ多くの方に接種していただき、子宮頸がんを予防していただきたいと考えています。