禁煙外来
喫煙は脳卒中、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)、肺がんをはじめとする多くのがん、肺気腫(COPD)などの病気の発病と関係していることがよく知られています。現在喫煙しているほとんどの方が、本当は禁煙したほうがいいと理解されているのでしょうが、ニコチンには依存性があり、なかなか禁煙に踏み切れないのではないでしょうか。禁煙することで上記のような病気の発症の危険性を下げることができますので、少しでも禁煙への意欲のある方にはぜひ禁煙治療を受けていただきたいと考えています。
当院では「禁煙治療のための標準手順書」に則った保険適用の禁煙治療を行なっています。治療の概要を以下に記します。
禁煙

禁煙治療の対象者

保険適用での禁煙治療の対象となるのは、以下の2つの項目に当てはまる方です。
なお、過去に禁煙治療歴のある方も前回の治療から1年経過していれば再治療可能です。また、IQOSなどの加熱式たばこを喫煙されている方も対象となります。

下記のニコチン依存に関する質問で5つ以上当てはまる方

  • 1. 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くたばこを吸うことがありましたか?
  • 2. 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか?
  • 3. 禁煙したり本数を減らそうとした時に、たばこが欲しくて欲しくてたまらなくなることがありましたか?
  • 4. 禁煙したり本数を減らした時に、次のどれかがありましたか?
    (イライラ、神経質、落ち着かない、集中できない、憂うつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手の震え、食欲、または体重増加)
  • 5. 問4でうかがった症状を解消するために、またたばこを吸い始めることがありましたか?
  • 6. 重い病気にかかった時に、たばこはよくないとわかっているのに吸ってしまうことがありましたか?
  • 7. たばこのために自分に健康問題が起きていると分かっていても、たばこを吸ってしまうことがありましたか?
  • 8. たばこのために自分に精神的な問題が起きていると分かっていても、たばこを吸ってしまうことがありましたか?
  • 9. 自分はたばこに依存していると感じることがありましたか?
  • 10. たばこが吸えないような仕事やつきあいを避けることがありましたか?

35歳以上の場合、ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上となる方

【例】
  • 1日の喫煙本数 10本 × 喫煙年数 20年 = 200
  • 1日の喫煙本数 15本 × 喫煙年数 14年 = 210
  • 1日の喫煙本数 20本 × 喫煙年数 10年 = 200

治療の実際

ニコチンパッチやバレニクリンという薬剤を使用して、5回の受診、約3ヶ月のプログラムで禁煙治療を行います。
初回受診時にニコチン依存度の評価、同意書の取得、治療薬の選択、処方を行います。 治療薬としてニコチンパッチ、またはバレニクリンを選択します。

ニコチンパッチ(商品名:ニコチネルTTS)

ニコチンを含む貼り薬を1日1回貼付し、禁煙開始時のニコチン離脱症状(たばこが吸いたいという欲求、イライラ、集中できない、など)の出現を軽減し、禁煙の継続を補助します。この薬を使用することで、使用しない場合と比べて、禁煙成功率が1.6倍高くなります。
はじめにニコチネルTTS30という貼付剤を4週間使用します。その後は2週ごとにニコチネルTTS20、ニコチネルTTS10と、ニコチン含有量の少ない貼付剤に切り替え、8週後に貼付剤の使用を終了します。 ニコチンパッチを使用する場合は、使用開始とともに禁煙してもらう必要があります。そうしないと、過剰にニコチンを取り込んでしまうことになるためです。ニコチンパッチの副作用としては、貼付した部位のかぶれや不眠などがあります。なお、心筋梗塞や脳梗塞を発症して間もない方、妊娠中の方は使用できません。

バレニクリン(商品名:チャンピックス)

※2023年11月現在、メーカーより出荷停止されており処方不可能
バレニクリンは飲み薬で、血液中に吸収されてから、脳内のニコチン受容体に結合することで、禁煙に伴うニコチン離脱症状を和らげる作用があります。また、喫煙に伴う満足感を抑制する効果もあり、この薬を内服することで、禁煙成功率が2.2倍高くなります。
禁煙を開始する1週間前からバレニクリンの内服を開始します(最初の3日間は0.5mg錠を1日1回、4日目から1日2回の内服となります)。8日目から禁煙を開始し、バレニクリン1mg錠を1日2回内服します。合計12週間内服を行います。
バレニクリンの副作用として嘔気、便秘、頭痛、不眠などが起こることがあります。嘔気を予防するために、食後にコップ1杯の水と一緒に内服します。また、まれにめまい、意識障害が出現することがあるため、車の運転など危険を伴う機械の操作に従事している場合、ニコチンパッチでの治療をお願いすることになります。

ニコチンガム(商品名:ニコレット、ニコチネル)

禁煙開始当初の強い喫煙衝動を和らげるために、ニコチンガムを使用することも効果的です。衝動のある時に使用する方法や、禁煙開始当初は時間を決めて定期的に使用する方法もあります。ニコチンガムのニコチンは口の粘膜から吸収されるため、ゆっくりと、30分から60分ほど噛み続けましょう。早く噛みすぎると、嘔気、胸やけが起こることがあります。ニコチンガムは病院では処方できませんので、ドラッグストアで購入する必要があります。
初回受診から2週、4週、8週、12週後に再診していただき、禁煙状況の確認、離脱症状や副作用の評価、処方を行います。

費用

全5回の受診料、薬代をあわせて、ニコチンパッチの場合約13,000円、バレニクリンの場合約20,000円となります。
禁煙したいけれども、なかなかできずにいる多くの方に、ぜひ禁煙治療を受けていただき、健康な生活を送っていただきたいと考えています。 ご希望の方は、予約は不要ですので、ご都合の良い日にご来院ください。