長引く咳の原因:副鼻腔気管支症候群

頻度は少ないものの、長引く咳の原因のひとつとして副鼻腔気管支症候群という病気があります。

慢性副鼻腔炎と気管支炎・細気管支炎・気管支拡張などが同時に存在する状態で、好中球という白血球が副鼻腔や気管支で過剰に炎症を引き起こした状態です。

症状としては咳に加えて、膿性の鼻汁、痰、後鼻漏などがあります。

 

治療としては炎症を抑える効果のあるマクロライド系抗菌薬の少量長期内服を行います。1-2ヶ月ほど内服を継続することで、鼻汁、痰などの気道分泌が減少し、その結果咳も減ってきます。

マクロライド系抗菌薬にはいくつか種類がありますが、まずはエリスロマイシンを開始することが多いです。治療効果不十分の場合は、クラリスロマイシンへ変更します。

ただし、クラリスロマイシンは肺非結核性抗酸菌症に対する重要な治療薬ですので、事前に痰の検査を行って非結核性抗酸菌の感染の有無を確認しておくのが望ましいです。

マクロライド系抗菌薬の副作用としては下痢、味覚異常などがあります。また、他の薬との飲み合わせが悪い場合があります。

治療経過次第ですが、症状が安定していれば、2年を目処にマクロライド系抗菌薬の内服を終了しますが、症状が再燃した場合は内服を再開し、さらに長期間の内服を行わざるをえないこともあります。

 

副鼻腔気管支症候群を発症される方は決して多くはありませんが、時々いらっしゃいますので、慢性咳嗽、膿性鼻汁・痰、後鼻漏などの症状が持続する方は、一度は胸部X線写真を撮影し、異常のないことを確認しておくことをお勧めいたします。

 

※ この記事は「咳嗽・喀痰のガイドライン2019」を参考に記載しました。

2022年04月30日